役員又は従業員に退職金を支給した場合の手続き

 役員又は従業員に退職金を支給した場合、普段とは違う事務手続きが必要になります。たとえば普段、特別徴収(住民税の徴収)をしていない会社・事業主であっても特別徴収が必要だったり、各種書面手続きもあったりします。そこで今回は退職金支給に係る事業者側の事務手続き(社会保険以外)についてまとめてみました。

なお、書類の提出先市町村役場は退職者が退職した年の1月1日に住む市町村役場です。以下では略して「役場」とします

具体的な事務処理手続き

1 退職所得の受給に関する申告書を退職者から受取る

 

 退職所得の受給に関する申告書は退職者に提出してもらう必要があります。提出された場合、会社・事業主は本来の退職金の税額を徴収しますが、提出されなかった場合は、退職金支給額から20.42%の源泉徴収と10%(市6%・県4%)の特別徴収をしなければなりません。退職者のためにも提出してもらうようにしてください。そして会社・事業主は提出された申告書を保管しておき、税務署役場から提示を求められたときのみ提示します。→退職所得の受給に関する申告書

2 特別徴収(給与所得者)異動届出書を役場に提出する

 

 特別徴収異動届出書は退職した役員又は従業員に関して今後住民税の特別徴収をしない旨を役場に報告するために提出する書類です。もともと特別徴収をしていない場合は提出の必要はありません。

3 特別徴収した住民税を支払う

 

 退職金に住民税が発生した場合は特別徴収納入書・申告書に必要事項を記入して徴収した住民税を役場に支払います。この場合、普段特別徴収を選択していない会社・事業主であっても徴収支払義務があるので注意が必要です。納入書には徴収した市民税・県民税を記入して、納入申告書に退職金の明細を記入します。 納付期限は退職金を支給した翌月の10日までです。

4 退職金を支給した人数が同時期に複数名いた場合

 

 退職金を支給した人数が同時期に複数名おり、且つ、その退職者たちが同じ役場の管轄で、さらにその退職金に住民税が発生した場合は特別徴収納入申告内訳書役場に提出します。これによって誰からどれだけ税額を徴収したかという内訳を役場に報告できます。ただし、役場によっては必要ない場合もありますので詳しくは役場に問い合わせてください

5 役員に退職金を支給した場合

 

 役員に退職金を支給した場合には上記の手続きに加えて退職所得の源泉徴収票・特別徴収票役場税務署に提出する必要があります。 役場には退職後1カ月以内に提出して、税務署には退職した年の翌年1月末日までに提出します(法定調書合計表に添付)。退職所得の源泉徴収票・特別徴収票

6 役員等に退職金を分割支給する場合

 

 役員等に退職金を分割支給する場合で、住民税が発生する場合は分割申請申告書役場に提出します。ただし、役場によっては必要ない場合もありますので詳しくは役場に問い合わせてください。分割支給の場合の住民税の納付期限は一括支給と同様に支給した翌月の10日までです。

7 源泉所得税を支払う

 

 退職金に源泉所得税が発生する場合には普段使用の源泉所得税の納付書に退職金の明細を記入して支払います。納付期限は給与の源泉所得税と同じです。そのため納期の特例を受けている場合はその特例期限までとなります。

 


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知って得する税の話
 

 

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