だれでもネットで気軽に個人投資家になれる時代になって久しいですが、その間、税制もめまぐるしく変わり確定申告が必要な個人投資家にとってはなかなか分かりづらい制度となっています。今回はFXで得た利益にかかる税金について情報をまとめてみましたので参考にしてください。
FXについて確定申告は必要?不要?
まずはFXで利益を出したとき、確定申告が必要なのか不要なのか気になるところだと思います。申告が必要か不要かは個人の事情によって大分変わりますので一律にこうだと言えるものではありませんが、特別な事情がない一般的なケースを以下にまとめてみました。
個人事業主の方 | 基本的に確定申告する必要があります。 |
サラリーマン・OL・フリーターなどで一定の給与所得のある方 | 必要経費を差し引いたFXの年間利益が20万円以下なら確定申告は不要です。ただし、年間利益20万円以下でも利益があれば住民税の申告は必要です。 |
専業主婦(夫)や特に仕事をしてない方 | 必要経費を差し引いたFXの年間利益が38万円以下なら確定申告は不要です。ただし年間利益が非課税限度枠(28~35万円各自治体によって異なる)を超えるなら住民税の申告が必要です。 |
注)確定申告は住民税の申告を兼ねるため、確定申告した場合は住民税の申告は不要です。
FXで得た利益は雑所得?事業所得?
FXで得た利益は基本的に雑所得ですが、FXを個人事業とする場合はその利益は事業所得と見ることもできます。事業所得の場合は青色申告することにより65万円の青色申告特別控除が可能となりますので、税金面では有利と言えます。
しかし、そもそもFXは個人事業として認められるのかという問題があります。これについてはすでに一定の判決(横浜地裁平成25年7月3日判決、平成24年(行ウ)第36号)がでており、その判決では納税者側が行ったFX取引の損益は偶然の要因が大きく社会通念上事業としては認めがたいとの指摘がありました。そのため、FX取引にかかる所得を事業所得として申告することは基本的に難しいと考えられます。
ただし、個人の事情によって判断が分かれるものまた公平な税制のありかたです。かかる判決は本業のある給与所得者に対して出されたものですが、これがたとえば専業トレーダーとして継続的に活動していて、その活動が事業的規模で行われ、且つ、ある程度安定した収益の実績がある場合ならFX取引にかかる利益も事業所得として認められる可能性もあるのではないでしょうか。
ただし、一般的にFXの性質上安定した収益というのはよっぽどの人でない限り難しいと思いますので、FXが個人事業として認められるかわからないような状態でリスクのある申告はお勧めしません。どうしても個人事業として申告したいという場合は、最低限自分の活動が事業性をもっていることを合理的に説明できる準備、具体的にはFX事業主としての活動記録、取引記録の保存や、複式簿記による帳簿記録を残しておくことが大事だと思います。
FX取引による雑所得の計算と税金
1.先物取引にかかる雑所得等に関する取引の損益通算
FXで得た利益は、正式には「先物取引に係る雑所得等」の中に含まれます。
「先物取引にかかる雑所得等」にかかる代表的な取引は以下のものです。
・商品先物、日経225等の先物取引
・CFD、オプション取引
・上場カバードワラント
これらに当てはまる取引はたとえ取引会社が違うとしても利益と損失を損益通算させて所得を計算することができます(金融庁に無登録の海外FX業者は除く)。簡単に言うとFXで得た利益は日経225で生じた損失と相殺できるということです。
よくある質問として「FXで得た利益と株式投資による損失を損益通算できる?」というものがありますが、これはできません。あくまで上に挙げたような取引の中だけです。
なお12/31時点の未決済ポジションにかかる含み益や含み損は原則的に計算に含みませんが、例外として未決済ポジションのスワップポイントについては各取引業者のシステムによって損益に含めるかどうか変わってきます。その辺は各取引業者ごとに損益に含めるかどうかの説明がありますので、その判断に任せていいと思います。
2.必要経費はどこまで認められるのか
FXで利益をだすために必要な経費は一律に決まってるわけではありません。取引手数料は直接的な経費として認められますが、それ以外はFXで利益を得るために必要な経費だということを合理的に説明できる必要があります。
FXで必要経費になる可能性がある代表的な例を挙げると以下のものです。なお、領収証やクレジット明細は必ず保存しておいてください。
・パソコン購入代金・プロバイダ利用料(私用分をのぞく)
・FXに関係する書籍等
・新聞代
・セミナー料金
・その他利益を出すために必要だと認められるもの
3.収入-損失-必要経費で欠損(マイナス)がでた場合
収入-損失-必要経費の計算でマイナスが出た場合はそのマイナス金額は欠損金と呼ばれます。欠損金が出た場合は確定申告することにより来年以降の利益と相殺させることができるので納税者にとってはありがたい制度です。ただし、欠損の繰越が認められるのは3年間で、その間は継続的に確定申告する必要があります。
4.具体的な計算例
内容 | +- | 金額 |
店頭FXにより得た収入 | + | 200万円 |
日経225により生じた損失 | - | 50万円 |
必要経費 | - | 25万円 |
繰越欠損金 | - | 30万円 |
先物取引に係る雑所得等 | 計 | 95万円 |
先物取引にかかる雑所得等にかかる税率は一律20.315%(所得税と住民税と復興特別所得税の合算税率)の申告分離課税なので、上の例だと95万円に20.315%を乗じます。
95万円×20.315%=192,000円(千円未満切捨)
実際は所得税、住民税、復興特別所得税は別々に計算されますが、全部あわせた税金の目安はだいたいこんな感じです。
ただし金融庁に無登録の海外FX業者を介して取引をしている場合はその損益と、国内業者で生じた損益は損益通算ができません。また課される税率も計算方法も国内業者のそれとは別々になりますので注意してください。
まとめ
FXの税金の計算方法は基本的には難しくありませんので、税理士に頼まなくても自分でやることは十分可能です。確定申告書類への記入の仕方などは最初はとまどうところだと思いますが、その場合は税理士に相談してもいいと思いますし、税務署でもやり方を教えてくれますので試してみてください。
ここまで読んでいただいてありがとうございました。
次回もよろしければご覧ください。