「個人事業と会社設立どっちが得なの?」という質問はよくうけます。
両者には様々なメリットデメリットがありますが、今回は「税金」に焦点を当ててどちらが有利か見ていきたいと思います。
個人の所得にかかる税金・法人の利益にかかる税金
まず初めに会社とは法人です。会社を設立すると個人から法人になります。個人事業主の場合、所得(利益)に対して所得税、住民税、復興特別所得税、事業税がかかるのに対して、法人の場合、利益に対して法人税等がかかります。
多くの中小企業にとっては、会社の利益は基本的に会社のオーナーである社長の給与となっていきます。その場合会社に利益は出ず、当然法人税も発生しません。実際日本の会社の7割が法人税を支払っていないと言われますが、会社の利益が社長の給与として調整されることが多いためです。
※イメージ図
個人事業主の場合 法人の場合
これを前提にすると、どちらのほうが税金が得か判断するためには個人事業主の利益(所得)に対してかかってくる税金と社長の給与に対してかかってくる税金を比較しなければならないことが分かると思います。
では具体的な数字を見ていきましょう。
利益が400万円の場合(1万円未満切り捨て)
個人事業の利益 400万円に対して |
会社社長の給与 400万円に対して |
差額 | |
所得税 | 29万円 | 13万円 | 16万円 |
住民税 | 37万円 | 23万円 | 14万円 |
事業税 | 5万円 | 5万円 | |
合計 | 71万円 | 36万円 | 35万円 |
※個人の事情によって税額に差があります。おおまかな目安として捉えてください。
※復興特別所得税は省いていますが所得税の2.1%かかります。
利益が600万円の場合(1万円未満切り捨て)
個人事業の利益 600万円に対して |
会社社長の給与 600万円に対して |
差額 | |
所得税 | 69万円 | 34万円 | 35万円 |
住民税 | 57万円 | 39万円 | 18万円 |
事業税 | 15万円 | 15万円 | |
合計 | 141万円 | 73万円 | 68万円 |
※個人の事情によって税額に差があります。おおまかな目安として捉えてください。
※復興特別所得税は省いていますが所得税の2.1%かかります。
利益が800万円の場合(1万円未満切り捨て)
個人事業の利益 800万円に対して |
会社社長の給与 800万円に対して |
差額 | |
所得税 | 116万円 | 69万円 | 47万円 |
住民税 | 77万円 | 56万円 | 21万円 |
事業税 | 25万円 | 25万円 | |
合計 | 218万円 | 125万円 | 93万円 |
※個人の事情によって税額に差があります。おおまかな目安として捉えてください。
※復興特別所得税は省いていますが所得税の2.1%かかります。
いかがでしょうか
個人事業で利益(所得)が400万円~600万円以上なら、会社を設立した方が税金面での恩恵が明確に表れてきています。
さらに会社を設立した場合、以下のような税務上のメリットもあります。
・会社の資産には相続税がかからない
・退職金を経費にできる。(個人は事業主と青色専従者の退職金を経費にできない)
・死亡退職金につき相続税の非課税枠が使える
非課税枠=法定相続人数×500万円
・一定の生命保険料を経費に出来る
・すでに個人事業主で会社を設立する場合は、条件付きで消費税が2年間免税(逆も同じ)
以上が税金による比較になります。
しかし、会社設立によって新たに支払わなければならないものというのも発生します。
それも考慮しなければ、どちらが得かは判断できません。
それについては次回お話いたします。→個人事業主と会社設立どっちが得なの?(出費)
ここまで読んでいただいてありがとうございました。
次回もよろしければご覧ください。